【ブログ小説】タイトルは未定です。皆さんで決めてください。同性愛の話です。④

ブログ小説

「俺はこのままルドラを待ち続けたらいいんだろうか」

「そんなことはないよ。その人のために一生を使う必要はない」

「でももしもルドラがまた帰ってきたいと思った時、俺は裏切ってしまうことになる。ルドラは嫌々フランスに行ったかもしれない」

「そうだとしても待ってるなんておかしいと思うよ」

「どうすればいいかわからないよ」

「もしも運命の人なら、また巡り合うだろうし、もう離れる運命なら離れていくんじゃない?」

「そうか、運命の人なら何をしていてもまた一緒になれるかもしれない」

「そう、だからあまり考えなくても良いんじゃないかな?」

ルドラは運命の人だと思っていた。

これからもこの先も。

別れるまではそうだと思っていた。

ルドラは俺の人生の一部のようなものだと思っていたのだ。

でもこんなことになって、本当はそうじゃなかったんだと思った。

ルドラは自分を裏切ったんだと思うこともあったんだ。

本当に俺のことを想ってくれているのであれば、離れることを選んだりしない。

でももしもルドラが本当に良い人なら俺は待ち続けてあげたほうがいいのかもしれない。

俺は勘違いをしていたかもしれないんだ。

俺はこの頃からルドラに変わる新しい、他の人を探したいと思わないようになっていた。

ルドラに会えないのもそれほど悲しくなくなっていた。

ルドラがいなくなったことで良いことも悪いこともあった。

豚肉を気兼ねなく食べれるようになったし、ルドラに遠慮して食べていなかったルドラが嫌いなものも食べられるようになった。

ソーセージ、デミグラスソース、ベーコン、牛肉(ルドラは鶏肉が大好きだった)、魚、エリンギ、漬物。

ルドラが嫌いだけど、俺が好きなものはたくさんあったんだ。

ルドラと過ごした3年間で俺は気づかないうちに我慢していたことがあったのかもしれない。

でもそれ以上に俺はルドラから幸せをもらっていた。

広島へ

しばらくして落ち着いた頃、俺は広島へ向かっていた。

有給休暇を使って充の裁判を見にいくことにしたのだ。

マスクをして裁判を傍聴しに行った。

久しぶりに見る充は少し老けていて、あの頃の充とは変わっていた。

それでもやっぱり充は充だった。

裁判は東郷が言う通り、相手の美佳子さんが劣勢のようだった。

このままでは、美佳子さんは充と智樹にハメられてしまうのかもしれないと思うと、俺はいてもたってもいられなかった。

それが事実なのかわからないが、その可能性だってあるのだ。

裁判が終わった後、俺は美佳子さんに話しかけた。

「すみません。神山さん」

「はい」

俺は美佳子さんがどんな人物なのか知りたかった。

ブランド品を購入するために、2,000万円もの借金をする人だと聞いている。

本当にそんな人なんだろうか。

充はそれを本当に知らなかったんだろうか。

「私、この裁判の有力な情報を知っています」

「は?」

「私の情報があればあなたは勝てるかもしれません」

「勝てるって、あなた何なんですか?」

「私は充の大学の同級生です」

カフェでの話

「こんにちは。こちらは弁護士の向井さんです」

「はじめまして。葛西と申します」

「葛西さん、あなたは田宮さんの大学の同級生だそうですね」

「はい、充は計画結婚をしていた可能性があります」

「どうしてそう思うんですか?」

「これはあくまで私の想像なので、事実ではないかもしれません。でも調べてみる価値はあると思うんです」

俺は充がゲイであることを伝えてはいけないんじゃないかと思った。

でもその疑惑だけは伝えても良いのかもしれないと思った。

充はいくらでも嘘をつこうと思えばつけるんだ。

嫌でもこんなことはしてはいけない。

「あの、充はどうして智樹・・・冬本智樹と毎週末会っていたんでしょうか」

「麻雀をしていたと聞いています。仲が良かったんでしょう」

「はい、でもいくら仲が良いといっても、毎週末会いにいくような友達はいないんじゃないでしょうか。しかも新幹線で2時間かけて」

「そうですね」

「私の友人の中には2人が付き合ってるんじゃないかという人がいます」

「まさか」

2人の目の色が変わるのがわかった。

「田宮は女性と浮気をしていたんです。それを隠すために友人である冬本さんに口裏を合わせてもらうよう頼んだ。私たちはなんとかその証拠をつかもうとしているんです。その情報をお持ちなんじゃないんですか?」

「女性と浮気」

「でも」

2人はセックスを一度もしていないんじゃないかと言いそうになったが、そんなことは言えなかった。

「なんですか?」

「いえ、とにかく充と智樹は・・・恋人だったってことはないですかね?」

「そんなことあるわけありません」

「はあ」

「もうよろしいでしょうか」

「はい」

そんなわけがない。

そうだ。

そんなわけはないのかもしれない。

でも東郷が言っていたことが本当だという可能性もある。

今わかっていることは、何が事実なのかわからないということだ。

でも確かに充は浮気を隠すために、智樹に口裏を合わせてもらっているのかもしれない。

智樹の証言次第で、この裁判はどちらにでも転ぶようになっている。

智樹と充はその証言で美佳子さんをコントロールすることができるんだ。

この裁判やっぱり東郷が言ってたみたいに、充たちが絶対に勝つようになっているのか?

京都へ

俺は少し考えたあと、京都へ向かうことにした。

智樹に会ってやりたいことがある。

このとき俺はまだ自分が正しいことをやっているのかどうかわからずにいた。

会って何がしたいのか。

それは自分の幸せを導くことにしかならないのではないか。

俺が智樹に会い、計画通り進めたら智樹は不幸になるかもしれない。

そう思ったけれど、俺は智樹に会いにいっていた。

「智樹?」

智樹は大学時代と全く変わっていなかった。

智樹の会社は東郷に教えてもらっていた。

智樹は地元のネットニュースに取り上げられ、インタビューを受けていた。

その記事には智樹の写真が載っていたんだ。

本当は東郷に言わなければいけないのに。

それに東郷を苦しめてしまうかもしれない。

でも俺はそれを避けるよう努めようとしていた。

「?」

俺は偶然を装って智樹に会うことにした。

「おー正志じゃないか!」

「久しぶり」

智樹はとても優しく出迎えてくれた。

「元気か?」

「うん、智樹は?」

「元気」

「そうか」

「久しぶりだね」

「本当に」

「たまたま旅行に来てたら偶然智樹に会えるなんて」

「そうだったんだ」

智樹は疑う気配もなかった。

まさか俺が東郷に聞いてここまでやってきたとも思っていないのではないだろうか。

俺は智樹の反応を見たかった。

智樹が俺と偶然会ったらどんな反応をするのか、見たかったんだ。

でもやっぱり智樹はとても良い人のように見えた。

智樹はすごく当たり障りの良い営業マンに見えたんだ。

「あ、そうだ、俺今晩ここら辺に泊まるんだけど、どこかで食事でもどうかな?」

「ああ、今晩か。今夜はちょっと用事があって」

「ああ、そうか、そうだよね。急に誘って悪かったね」

「いや、こちらこそ悪いな、せっかく誘ってもらったのに」

「あー俺、じゃあ帰るね。忙しそうだし」

「ああ、また連絡するよ」

「うん、俺も。」

「じゃあ」

俺が今回したかったことは、果たせたんだ。

なんだか自分がどんどん嫌な人になっているような気がしていた。

自分のメリットのために、人をこんな風に。

ルドラとの思い出

俺は京都へ行ってから横浜へ帰ってきていた。

ルドラと別れて3週間が経っていた。

はじめの頃は受け入れられなかったが、いろんな人に相談して少しずつ受け入れられるようになっていた。

今はルドラがいなくなってしまったせいでできた時間にすることも一通り決めることができた。

少しずつではあるが、思ったよりも早く前向きに歩くことができるようになっている気がするのだ。

夜少し買い忘れたものがあり、コンビニ出かけることにした。

家の近くにはコンビニがなく、自転車で行かなければいけない距離にある。

辺りはすっかり暗くなっていた。

久しぶりに乗る自転車のライトは充電式のため点かなくなっていた。

俺はどうしようもなく、ルドラがフランスに持っていけなかった自転車に乗ることにした。

ルドラのサドルはとても高く、ルドラの足の長さを感じた。

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