【ブログ小説】タイトルは未定です。皆さんで決めてください。同性愛の話です。⑨

ブログ小説

俺は今も目覚めず眠っている。

俺の耳には聞こえている。

機械的な何かが一定の間隔で鳴り響いていることを。

おそらく病院のベッドで眠っているんだろう。

全て知っている。

でも起きることはできない。

美佳子へのメッセージ

俺は充と智樹によって人生を操作されてしまったかもしれない美佳子さんへ対して、応援したいという気持ちを持っていた。

でも自分は美佳子さんを助けるばかりか邪魔をしてしまったかもしれない状況で、自分の言葉など聞いてくれるなど思っていなかったが、どうしても励ましたいという気持ちがあった。

俺は初めて会った際に聞いていた美佳子の連絡先へメッセージを送信した。

”美佳子さん

たとえどんなことがあっても人生は続いていきます。

充はあなたを利用した可能性があります。

充は親を黙らせるためにあなたとの結婚を利用したんです。

私も大学時代充と智樹に同じようなことをされました。

それを知ったのは10年経った今でした。

でもあなたは今知ることができたんです。

あなたは騙されただけです。

あなたは何も悪くありません。

事情は様々だと思います。

私にも決して辞めることのできないことがあります。

それは誰もが抱えている悩みなのではないでしょうか。

どんな状況に陥ろうとも、必ずまた元気に笑える時がやってきます。

今までもそうだったのではないでしょうか。

どうか気を落とさず、また歩いてください。

葛西”

美佳子はメッセージを読み終え、立ち上がった。

そしてまたネットでブランド品を物色し始める。

人にはどんなに諭されてもやめられないものがある。

それは使命なのか。

運命なのか。

充と智樹が抱き合っている。

智樹はとても幸せそうな顔をしている。

その一方で思いつめたような表情をしている充。

何があっても人生は続いていく。

どんなことをしても、何が起きたとしても、変わらず人生は続いていくのだ。

でもそれは良い時もあれば、悪い時もある。

第二章〜充と智樹、美佳子、俺とルドラ〜

俺は目を覚ました。

事故に遭ってから1年が経過していた。

事故に遭っていなければ、俺は年末にルドラと北海道へ行く予定だったのだ。

俺はルドラとの予定をすっぽかしてしまった。

ルドラはどうしたのだろうか。

久しぶりに目覚めた俺の視界には母親の姿があった。

起きた時、ピーちゃんのことが頭によぎった。

「ピーちゃんはどうなった?」

「ああ、ピーちゃんね。今うちで引き取ってるわよ」

「そうか」

俺はとても安心した。

ルドラのことを母親に聞くことはできない。

俺はすでに家族に自分がゲイであることを伝えていた。

だから母親は俺に結婚の話をすることはない。

しかし俺に彼氏がいたことを伝えるのはなんだか恥ずかしかったのだ。

ゲイ同士のドラマのように、母親に彼氏を紹介するようなことを俺にはできなかったのだ。

家族に大切な人の存在を言えない

以前母親と姉が俺の東京に来たことがあった。

ルドラは親が来ることを知って自分が住んでいる形跡を全て消し去った。

飾っている自分のアルバムや自分が好きなアニメのグッズなど全て見えないところへ隠したのだ。

俺はそれを見てなんだかとても悲しい気分になった。

なぜ愛する人が自分の存在を消さなければならないのか。

母親と姉がやってきた時、ルドラが使っていたモニターがテレビの横にあった。

「なんでここにモニターがあるの?」と母親に聞かれて焦ってしてしまった。

これは元々俺がテレビを見ている時にルドラがゲームをするために買ったモニターだったのだ。

「ゲーム用やで。テレビ見ながらゲームするねん」

俺がついた嘘はそんなものだった。

おそらく母親は俺に彼氏がいることに感づいていたのではないだろう。

家の外にはルドラの自転車があったし、洗面台にはルドラの歯ブラシがあったのだ。

もちろんキッチンにはルドラの箸だってある。

俺はそうだとしても良いと思っていた。

だけど母親は何も言わない。

恋人の存在の有無すら聞かない。

俺が親に恋人の存在を伝えることは決してないのだ。

修正の日々

目が覚めた後だんだんと体調が良くなり、リハビリを始めた。

一年間も眠っていたせいで、体は以前とだいぶ違っていた。

だが幸いなことに障害は残らなかった。

俺が事故に遭ったのち、当然仕事は辞めることになっていた。

裁判のこともその後どうなってしまったのかわからない。

一番心配なのはルドラのことだが、スマホも解約されてしまっている今、連絡する手段がなかったのだ。

ルドラはどんな思いを抱いていたのだろう。

家賃を払うのも煩わしいということで、俺が住んでいた家は綺麗に引っ越し作業が行われ、実家の大阪に全て持っていかれたのだそうだ。

ルドラはあの後、2人で住んだ家にやってきたのだろうか。

そこで何を目にしたのだろう。

あるいは急に連絡が来なくなったことで、どんな気持ちになったのだろうか。

病院にはパソコンもなかった。

俺はなんとしても早くリハビリを終えて、ルドラに連絡したいと思っていた。

「ほら、ピーちゃんよ。蓮と一緒に遊んでるのよ」

そう言って母親が甥と一緒に遊んでいる、ピーちゃんの写真を見せてくれた。

「蓮ちゃんは大喜びよ。ずっと猫を描いたいって言ってたから」

「そうか」

ピーちゃんは大丈夫だったのかな。

猫は環境が変わることに弱いから、ストレスを感じたんだろう。

色んなところへ迷惑をかけてしまったな。

「ピーちゃん、大丈夫だった?」

「ん?」

「俺がいなくなって」

「ああ、あんたが事故に遭ってすぐに家に連絡があって。それで東京へ飛んできたの。それから少し経って落ち着いて。家のことを考えていたら、あってピーちゃんのことを思い出して。真紀に言ってすぐにあんたの家に行かせたのよ。鍵はあんたが持ってたから」

「どれくらい?俺が倒れてから」

「1週間は経ってたんじゃないかと思う」

「1週間?」

「そしたらピーちゃん、ちゃんといたんだそうよ。でもすっかり痩せていて」

ピーちゃんと真紀の再開

「ピーちゃん?大丈夫?」

真紀が俺の家に入ったら真っ暗の中ピーちゃんが押入れの中に隠れていたそうだ。

ピーちゃんは元野良猫だったため、俺とルドラ以外が触れることは難しい。

真紀は俺の家でキャットフードをあげ、ピーちゃんが安心するまで一緒にいてくれたそうだ。

ピーちゃんはお腹を空かしており、警戒していたが餌をやるとすぐに食べたそうだ。

猫は2週間はご飯を食べなくても大丈夫だというが、俺はピーちゃんに朝昼ご飯を与えていたから、1週間も与えなかったことはなかった。

いつも餌の時間になると、うるさいほど鳴きその辺の物を落とし始めるのだ。

そんなピーちゃんの姿を知っているから。

ピーちゃんは1週間どう過ごしていたのかと思うととても悲しくなった。

真紀と母親はは俺がいなかった1週間の間に荒れてしまった俺の家を掃除し、徐々にピーちゃんを慣らしてくれたそうだ。

写真に写るピーちゃんは以前と変わらない少し太った体になっていた。

俺はそれを聞いて安心した。

そしてピーちゃんに会いたくなったのだ。

退院

2ヶ月後俺は退院することになった。

しばらくは大阪の実家で暮らすことになる。

俺は家族とともに実家へ移動した。

やっとPCをいじれるようになった。

仕事を探さなければならない。

それにまた東京へ行くのか。

そんなことを考えていた。

でも何よりも俺はルドラのことが気になった。

ルドラとはSNSで繋がっていた。

俺はルドラにメッセージを送ってみた。