【ブログ小説】ここだけは確かな場所4

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俺とゲイブリエルはその後もティちゃんを必死で探した。
これまでもそうだったように、俺たちはティちゃんが見つかるまで探すつもりだった。
疲れてしまい、家に戻ってくるが、どうしても落ち着かなくて外へ出ていってしまうのだ。
そんな俺たちの姿を陸は横目で見ていた。

やがて陸も外に出て探すようになった。
家に一人でいるのは寂しくなったのかもしれない。
陽はすっかり落ち、辺りは暗くなっていた。
俺たちは懐中電灯を使って探していたが、ティちゃんの姿はどこにもなかった。
「ねえ、お腹空かない?」
陸がそう言いだした。
「明日になったら帰ってくるかもしれないじゃん」
俺とゲイブリエルはお腹を減らしていた。
陸の言う通りだ。
もしかしたら、ティちゃんも朝になったら帰ってくるかもしれない。
お腹を空かせているに違いないのだから。

出前をとって三人で食事をすることにした。
俺とゲイブリエルはティちゃんのことが心配で、夕食があまり喉を通らなかった。
ティちゃんがいない夜を過ごしたことがない俺たちはとても不安だったのだ。
何かの物音がすると、ティちゃんが帰ってきたような気がして、ゆっくり眠ることもできなかった。

次の朝もティちゃんは帰ってこなかった。
ゲイブリエルはいつもよりも早く起きて、ティちゃんの帰りを待っていたが、その日も帰ることはなかった。
陸は週末まで、この家にいることになっている。
とはいえ状況が変わったかもしれないと思い、警察署へ電話をしてみたが、返答は同じだった。
俺はそろそろこちらでの暮らしを進めなければいけないと思い、色々やるべきことを行おうとしたが、ティちゃんのことが気になって一向に前に進まなかった。
陸はやることがないので、ティちゃんを探すよう言いたかったが、陸が迷子になることも危険だったので、頼むこともできなかった。
ゲイブリエルは就職先に顔を出さなければならなかったが、ティちゃんを心配しているのか、いつもより元気がなかった。
俺は畑を借りるため、陸と一緒に近所へ出かけることにした。
近所を探索しているときにティちゃんが見つかるかもしれないと思い、周囲を見回しながら挨拶に回った。
近所の人は若い人が珍しいのか、とても嬉しそうに出迎えてくれた。
陸を俺の子どもと間違えいている人もいたが、詳しいことを言うと面倒なことになりそうだったので、笑ってやり過ごすことにした。
家を一軒一軒回る度にアメリカンショートヘアーの猫がいなかったかと聞いて回ったが、有力な情報は出てこなかった。

しばらく回っていると、畑を貸してくれるお家が見つかった。
その家には2反畑が余っているというので借りられるか交渉してみることにした。
お家でお話をしていると、ティちゃんらしき猫がその家の子どもと遊んでいるのが見えた。
首輪が全く同じで、アメリカンショートヘアーだ。
この子はティちゃんに違いないと思ったが、ティちゃんがその家の子どもと楽しそうに遊んでいたため、うちの猫だと言い出すことができなかった。
話がだいたい済んだ頃、「その猫は?」と聞いてみた。
「ああ、昨日うちに上がり込んできたんだよ。首輪が付いているし、誰かの家の猫なんじゃないかな?と思っているんだけど」
「あ、それ、うちの猫なんです」
そう言って、ティちゃんに近づくとティちゃんが俺に気づいたのか、親しげにニャーと話しかけてきた。
「すみません。うちの猫なんですが、何も証明するものがなく」
「あ、いいよいいよ、その子を見たらわかるわよ。持って行きな」
「はい、ありがとうございます」
俺はティちゃんを抱きしめて、匂いを嗅いだ。
猫の体の匂いはとてもいい匂いで、顔を埋めるととても落ち着くのだ。
俺は目一杯戯れてから、ティちゃんを入れるためのカバンを取りに帰ることにした。
窓やドアを閉めて、逃げないようにして!と厚かましいことが言えなかったため、俺は慌てて家に帰ることにした。

戻った頃にはもうティちゃんがいなくなっていたようだ。
陸は流石にがっかりしたように見えた。
俺たちはしばらくその方の家の近くを探したが、ティちゃんが見つかることはなかった。
「お腹を空かせているだろうに。」
俺も流石に落ち込んでしまった。
さっきティちゃんに餌をあげればよかったと思った。
あの時俺にニャーと挨拶してきたということは、忘れていないという証拠である。
その後も会いたかったと言わんばかりに甘えてきたのだ。
まだ俺たちのことを家族だと思っているに違いない。
ティちゃんはきっとこの辺を散策しているだけなのだろう。
そう思って待ってみるのもいいのかと思った。
しかし次の瞬間にはやはり心配でたまらなくなり、そわそわしてしまっていた。
帰り道。
「ねえ、どうしてそんなに心配なの?」と陸が聞いてきた。
「そりゃ心配だよ。ティちゃんは俺たちの家族なんだもん。いなくなったら心配だよ」
陸は下を向いていたが、俺は気づかず話し続けた。
「今までずっと一緒に暮らしてきたんだ。急にいなくなったら、どうしてるんだろうとか、嫌だったのかなとか、色々考えちゃうじゃない?早く会いたいって。そればっかりだよ」
「へえ、そうなんだ」
俺は陸が何を考えていたのか、ここでようやく気づいた。
「陸くんのお母さんだって、きっと今頃心配してるんだよ」
「そうかな。でもお母さんが来るのは、まだ先なんでしょ?僕はどこにいるかわかっているのに」
俺は陸の悲しそうな顔を見てとてもかわいそうに思った。
「陸くんのお母さんはきっと忙しいんだよ。だから、早く会いたいけど、会えないんだよ。きっと、本当は今日にでも迎えにきたいと思っているはずだよ」
「ふーん。そうかな」

家に着くと、ゲイブリエルが帰ってきていた。
「ゲイブリエル、さっきティちゃんが見つかったんだけど、もういなくなってて」
「え、どういうこと?」
「さっき近所の人のお家にティちゃんがいたんだ。でもカバンを取りに行っている間にいなくなっちゃって」
「ええ、そうなの?」
「じゃやっぱりこの近くにいるんだね。どうしよう、時間が経って、遠くへ行ってしまったら」
「うん」
「やっぱり俺探してくる。さっきいたお家ってどこなの?何時くらい?」
ゲイブリエルは慌ててさっきいた家の方へ向かっていった。