テレビ(情報番組)のADはどんな仕事をする?元ADが解説

テレビ

私は4年ほど前まで3年半ほど、テレビ番組のAD(情報番組)をしていました。

テレビ番組の仕事に就きたいと思う人は今でもいると思います。

YouTuberを目指すにしても、動画制作というのがどれだけ大変なことか、プロの現場で勉強することはとても有益だと思います。

正直私はキツすぎて辞めました。

テレビ業界で働く前に、キツイから辞めとけと言われていたら、ADになっていなかったかもしれません。

ですので、少しでも私のような根性のない人が、本気でテレビ業界を目指してしまい、もしかしたら無駄だったかもしれない時間を過ごすのを避けられるようこの記事を書きます。

(私はADになったことを後悔していません。なぜなら、自分でやらなければ、どれくらいキツイかわからなかったからです。

3年間は少なくとも楽しんでやれました。

実際に2014年頃私が働いていた頃は、超キツイかったです。それでも今も続けている人はいます。あなたは続けられるでしょうか。)

テレビのADの仕事はどんなものなのでしょうか。

リサーチ

まず行うのがリサーチだと思います。
どんな番組でもリサーチ作業はあるのではないでしょうか。

取材先を見つけるのも、専門家を探すのも、情報を集めるのも全てリサーチ作業です。

この作業が3割ほどを占めるので、ADはパソコンでの検索能力を鍛えられます。

ディレクターに情報がなかったと報告するとキレられる可能性があるので、基本的にあるまで探し続けます。

もしその情報がないのであれば、ディレクターが納得できるだけ調べた結果が必要です。

これだけ調べてもないなら仕方ないと思ってもらえるまで調べなければなりません。

ネタ番組(イッテQ)などでは、ADだけに任せるのではく、リサーチ会社に頼むこともあります。

リサーチ会社に依頼をするのはADの仕事です。

素材探し

次は映像などの素材探しです。

こちらはほとんどがテレビ局のアーカイブ(過去の映像)倉庫にあります。

アーカイブは端末を使用し、検索し探していきます。

そのテープのキャプション(どんな映像写っているか記載されているもの)を見て、実際に自分の目で確かめてディレクターに持っていくのです。

新人の頃はディレクターが求めている映像がわかりませんが、慣れてくるとディレクターの指示だけでだいたいどんな映像を求められているのかわかります。

ベテランになると、ほとんどが見たことのある映像になってくるので、探す時間も短縮されます。

ADが探す素材の中には写真データも含まれます。

ほとんどはアフロなどの画像データを取り扱う企業のサイトを調べれば見つかるのですが、見つからない場合があるため、その時はSNSやYouTubeを探すこともあると思います。

また、最近ではぱくたそなどの無料画像のサイトなども増えてきているので、こういったサイトで得た画像をイメージとして使用する場合もあります。

素材の許諾

素材を見つけたら、素材の許諾を取る必要があります。

映像には写ってはいけない人や物があるため、どの部分が使えるのか確認したりするため、その映像の内容に詳しい人に使用許諾を頂く必要があります。

ロイター通信社やAFPなどの海外の映像会社の映像を使用する場合は使用料なども頭に入れなければなりません。

プロデューサーはどの映像がどれくらい使用料がかかるか知っていますが、ADも知っている必要があります。

何秒でいくらかという規定があるので、それに合わせて映像を使っていくのです。

また素材によってはクレジット(会社名など)を映像に載せるよう決まっているものがあるので、その情報をディレクターに共有します。

これがきちんと伝わっていなければ後に大問題になります。

そのためADは実際に放送されるまで、ドキドキしています。

街録

こちらは街声とも言われるもので、街頭インタビューのことです。

情報番組では街録が結構重要なので、行うことが多いです。

100人に聞いてみたなどの情報が流れることがありますが、これは実際にADが街でカメラを片手にインタビューを行なっています。

街録では断られることが8割で、2割くらいの人が答えてくれる感じです。

ですので、100人にインタビューするのはとても大変な作業です。

土日祝日の方が答えてくれる人が多いと思います。

テレビのADは銀座の歩行者天国や有楽町のイトシアの前、渋谷スクランブル交差点の前、新橋のSL広場など、撮影許諾を取らなくてもいい場所で、街録を行うことが多いので、その場所へ行けばテレビの人に声をかけられる率が高くなると思います。

人が足りない時は一人でインタビューを行うことがあるため、体力も消耗します。

慣れてくると、インタビュアーに言ってほしいことを言ってもらえるよう、質問することができるようになりますが、新人の頃はなかなか言ってほしいことを言ってもらえず時間がかかることがあります。

また、主語述語がある文章で答えてもらわないと、編集で使うときに使いにくいので、何度も同じことを聞くことがあります。

良いことを言っているのに、ちゃんとした文章でなければ、使えないので、ADは街録の時もとても集中して行わなければなりません。

ディレクターと一緒に行くこともありますが、ディレクターも忙しいので、ほとんどADだけで行くことになります。

カンペ作り

ここからはスタジオ収録の準備になります。

ADはスタジオではあまり作業がありません。

あるとすれば、出演者にカンペを見せたりするくらいです。

スタジオではディレクターがメインで仕事をしています。

あるいはスタジオ収録専門のチームが取り仕切る番組もあります。

毎日生放送を行なっている番組ではスタジオ班というチームがあることが多いと思います。

スタジオ収録までのADは徹夜でカンペを作ります。

何枚ものカンペを作成し、マーカーペンで色づけしたりします。

マルチの作成

番組で使用する、パネルを作成するのもADの仕事です。

もちろん中身の情報についてはディレクターが考えますが、その絵や情報をデザイナーに提出するのはADの仕事です。

絵を描くのが得意なディレクターは自分で絵を描いてくれますが、苦手な人はADが描くこともあります。

そんなにクオリティは求められませんが、完成形が伝わるような絵が描けなければなりません。

デザイナーの会社は外注会社にお願いします。

編集作業のサポート

編集はディレクターと編集者が行います。

ADはそのフォローをします。

台本を見ながら、次に使用する映像をセットします。

編集作業は大変なので、ディレクターはイライライしていることが多いため、先読みができないADは怒られます。

慣れてくると次は何をすればいいかわかってきますが、慣れていないとわかりません。

そのため、新人ADと一緒に編集をするディレクターはとても不機嫌になります。

テープの受け渡し

生放送の場合、ギリギリまで編集作業が行われているため、ADは完成したテープをスタジオまで届けなければなりません。

ベテランディレクターや簡単な企画の場合は、余裕を持って作業することができますが、そうでない場合や速報などの情報を流す場合は、ギリギリになります。

そのためADはエレベータで待っていて、みんなで連携して、バケツリレーをすることがあります。

生放送の裏ではADが走ってテープを届けるということが実際にあるのです。

私は一度生放送中に、近くの編集所からテレビ局まで走ってテープを届けたこともあります。

ADを目指す人は、映画監督、YouTuber、楽しいことをすることを目指す人が多いと思います。

私は映画監督に憧れていました。

テレビ番組を制作するということは、とても大変です。

調べて、映像を撮って、編集して、放送します。

放送技術は進化していますが、作業自体はアナログです。

ADの作業は単純なものが多いです。

もちろんディレクターになればクリエイティブな仕事もできますが、ほとんどのディレクターがプロフェッショナルなことなどしておらず、チーフディレクターに怒られ怒鳴られる日々を過ごします。

才能のある人以外は、毎日プライドがズタボロになります。

才能のある人も、ボロボロになるまで働きます。

どんどん疲労は溜まっていきます。

それでも仕事は襲ってきます。

こういう状況でも余裕な人は世の中にたくさんいます。

ドロドロになり、汗だくで、汚くても余裕。

ストレスは溜まらないほうなんだという気楽な人は向いているのではないでしょうか。

でも頭が良くて、ネジが外れていなくて、すごく真面目で几帳面な人は、向いていないと思います。

ただ楽しいのが好きなだけでは3年くらいしか保ちません。

楽しいことも経験し続ければ苦になります。

テレビの世界の毎日遊園地のような日々が現実になり、歳を重ねおっさんになった時、他の世界との対比が始まったら、辞めたいと思う日がやってきます。

その時、後悔しないのであれば、やってもいいと思います。

それでもテレビを選べるならやってもいいと思います。

でも、他にもたくさん仕事はあるのです。

一番重要なことは、テレビ業界に入って身に付けたスキルは、他の職種ではあまり評価されないということです。

もちろんそんなことはどうでもいいです。

私はきちんと新しい仕事に就けました。

でも世間にはテレビで働く人はちょっとヤバイやつだと思っている人もいます。

そういう世界に入るんだと、それをきちんと頭に入れないといけないです。

マツコ・デラックスさんが「マツコ会議」で言っていました。

テレビで働いている人は、「狂っておかしくなっていないとできない」と。

自分の欲望を捨てるのです。

プライベートも全部捨てて楽しい楽しいテレビの世界を愛せる人だけがテレビマンになれます。

まとめ

もちろん番組の内容によっては違う作業を行うこともあると思います。

また専門家へのインタビューなどの作業もありますが、だいたいはこれが基本かと思います。

他の仕事と違うのは、テレビ番組は一回きりの放送のために行う仕事なので、出来上がった映像に対してはミスができないということです。

情報番組の場合、間違えた情報を流すと後で、訴えられることもあります。

また後日番組内で出演者が謝らなければならないこともあるのです。

そんなことは避けなければなりません。

そのため、絶対に間違った情報を放送することができません。

現場は、ピリピリしています。

スタジオ収録の時は芸能人に会えたりと、普段できないことができるので、とても楽しいですが、絶えず時間に追われる仕事かもしれません。

将来をきちんと考え、選択してください。