俺たちは高山村でキャンプをすることにした。
キャンプ場の目の前には川があり、俺たちは陸と川遊びをした。
陸はキャンプをしたことがないようで、とても楽しそうに遊んでいた。
「いっぱい食べるんだぞ」
陸はバーベキューを頬張った。
「ティちゃんも連れてきたら良かったのに」
「ティちゃんはいつも同じ場所の方が好きなんだよ」
「そうなんだ」
ティちゃんはせきさんに預けることにした。
猫はあまり環境の変化に敏感だということを知っていたためだ。
俺たちはここで二泊する予定だ。
暗くなってくると、花火をした。
花火で光る陸の顔はとても可愛かった。
「ねえ、おじさん、おじさんとゲイブリエルはどういう関係なの?」
「え?」
俺とゲイブリエルは顔を見合わせた。
「いや、どういう関係なのかと思って」
「はは、俺たちの関係はまだ知らなくていいさ」
「ええ、付き合ってるの?」
俺は吹き出してしまった。
最近の子ども男同士で付き合う人がいることを知っているのかと感心した。
「そうだよw付き合ってるよ」
「へえ、そうなんだ。おじさんたちはLGBTなんだね」
「はは」
とても照れ臭くなった。
「そうか」
陸は何か考えているように見えた。
花火が終わった頃には空に満点の星空が見えていた。
「うわー!すごい!」
陸が空を見上げていた。
陸は初めて星空を見たようだったが、俺もこんなに星を見たことはなかった。
「すごい綺麗だね」
「うん」
ゲイブリエルも感動していた。
星空を見ながら寝ていると、なんだかとても幸せな気分になった。
陸もそう感じてくれていたら嬉しかった。
陸には今までにないくらい楽しい思い出を作って欲しかったのだ。
親に置いていかれたけれど、こっちにきた方が良かったと心から思って欲しかったからだ。
そう思ってもらえるよう、俺は陸と思いっきり遊んだのだ。
「ねえ、おじさん。僕のママは変なのかな?」
「ん?」
「ママ、怒ってたの聞いたでしょう?」
「やっぱり陸が電話してきたんだね」
「うん」
陸は何を感じているのだろうか。
「ママあの日からとっても優しくなったんだ。1ヶ月くらいはとても優しかった。何をしても怒らなかったんだけど、また元に戻っちゃった」
陸はとても悲しそうな顔をしていた。
「陸はお母さんが嫌いなの?」
「んー。すぐに怒るママは嫌いだ」
「そうか」
「優しかったら好き?」
「うん、優しかったらいいけど。いつも怒ってる」
「そうか」
「じゃ違う家に住みたいの?」
陸は黙っていた。
こんなことを聞くのは、11歳の子どもにはきつかったかなと後悔した。
「わからない。でも帰りたくない」
陸の頬に涙が流れたように見えた。
俺は陸の髪を撫でていた。